シリーズ累計1,700万部を超える『文豪ストレイドッグス』原作者・朝霧カフカ先生来校!漫画原作者のリアルを語る

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授業/特別講師/講演会
マンガ学部

漫画家や漫画原作者、編集のお仕事に興味がある人必見のイベントがKADOKAWAマンガアカデミー東京校にて開催されました。
ご登壇されたのはシリーズ累計1700万部(電子含む)を超える『文豪ストレイドッグス』原作者・朝霧カフカ先生!
当日は大阪校・名古屋校にも中継で配信され、KADOKAWAの担当編集・加藤浩嗣様をまじえてヒット作の裏側を解説いただきました。

【1. 「ニコニコ動画」での投稿から連載へ】

イベントは座談会形式で進行しました。

左:朝霧カフカ先生、右:担当編集の加藤浩嗣様

――朝霧先生のデビューは、加藤さんからのお声掛けがきっかけだったそうですね。

朝霧先生:会社員を辞めて、しばらくは好きなことをしていました。ニコニコ動画に『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオ動画を投稿していたら、突然「焼肉を食べに来ない?」とメールが来て、それがきっかけでした。

加藤様:動画を見て「この人、物語を書けるのでは」と思ったので、とにかく会ってみようと。昨今、SNSで作家さんにお声掛けすることも増えてきましたよね。

朝霧先生:僕は正直、新人賞で1位を取る自信がなかったんです。本来は、新人賞を受賞し、読み切りを重ね、担当編集がついて、会議を経て連載が始まるという流れが一般的ですよね。でも僕はニコニコ動画に投稿していた作品がきっかけで、連載が決まりました。

――かなり異例ですよね。

朝霧先生:業界への入り方は一つではないと思っているんです。エンタメに携わりたいと思ってもなかなか入る道が難しいという中で、実績として名刺代わりになる作品ができればと思い、半分趣味で始めました。

【2. 朝霧カフカ先生が漫画原作者を目指した原点】

――そもそも物語を作ろうと思った原点は?

朝霧先生:『RPGツクール』です。中学生の頃に『RPGツクール』で友人とゲームを作った経験が大きくて、「遊ぶより作る方が楽しい」と気づいたんです。そこから物語やシナリオを自分で構築したいと考えるようになりました。大学では本格的にRPG制作を想定してシナリオを書き始め、その原作となる小説を一本書き上げました。その過程で、「物語を作る仕事は、自分にとって理想的な仕事だ」と実感したんです。頭を使えば使うほど面白くなりますし、成果がそのまま評価に直結する世界でもあります。漫画業界は、頂点を取ったときのリターンが非常に大きい業界です。努力が大きな結果につながる可能性がある。そうした点にも魅力を感じ、仕事として本気で目指すようになりました。

【3. 「漫画原作者」というお仕事の喜び、難しさとは】

――漫画原作の難しさは?

朝霧先生:大変だと感じたことはあまりないですね。以前4年間サラリーマンをしていたときと比べると、漫画原作の仕事は環境面では恵まれています。時間の裁量もありますし、自分のペースで集中できます。あえて挙げるなら「分業」であることが難しさでもあります。原作者は作画、編集とチームで作品を作ります。「すべて自分でコントロールしたい」というタイプには負担になるかもしれませんが、僕の場合は分業が向いていました。原作の最終的な面白さの責任は自分が持つ。そのうえで、春河35先生、担当編集の加藤さんと三人体制で、より良い形に磨いていく。そうした“ゆるやかな分業”でやっています。これまで分業を経験したことがない人は、一度チームで作品を作ってみると良い思います!

――意見がぶつかることは?

朝霧先生:ここは絶対こうしてほしいというところはちゃんと伝えますけど、あとはもうお任せします。本当に良いものを作れたら、あとは、次の工程の春河先生が『きっと良い絵をつけてくれる』と信じています。

――まずは信頼関係を築くことが大事ですね。ところで、漫画原作は、どういった形式で書かれていますか?

朝霧先生:途中までは字コンテでした。文豪ストレイドッグスの「天空カジノ」あたりからネームもやるようになって、ネームを書かせていただいています。絵は、趣味で描いていたぐらいですが、すごくきれいな絵じゃなくても春河35先生に伝わればいい。表情は大事なのでしっかり描きますけど、そこまで絵の力は求められないです。

――加藤さんから見て、カフカ先生の原作の良いところは?

加藤様:映像が浮かびやすいように時間軸で脚本を書いてくださったり、分かりづらくなりそうなところは説明を入れてくれたり、山場をきちんと作っている。漫画にしたときにどう表現してほしいかまで考えてくださっているのが分かりやすいですね。

――朝霧先生が影響を受けた作品はありますか。

朝霧先生:言い出すと1時間半ぐらい話してしまいますが(笑)。中学の頃、『幽☆遊☆白書』に影響を受けました。仕事を始めてからは映画ですね。良いものを長く作り続けて、常に最先端のセンスを取り入れているのは映画だと思います。コマ割りの参考にもなりますし、特にセリフですね。漫画のセリフはどれだけ短くできるかで決まります。字幕は文字数制限が厳しいので表現を凝縮する勉強になります。漫画原作者志望の方におすすめです。

――漫画原作者のやりがいは?

朝霧先生:たくさんの人に作品が届き、笑顔にできること。意外なところでは、労働時間が短い。集中して脳を使うので、物理的に1日3時間くらいしか働けないんです。サラリーマン時代から見ると天国で、あとはずっとゲームをしています(笑)。でも、何をやっても無駄にはなりません。ゲームの知識が仕事に役立つこともあるので、勉強でない時間があまりないですね。

――漫画原作者になる方法は?

加藤様:いちばん大変です。お話に特化している分、クオリティが求められます。漫画というメディアに合わせて高いレベルで作れるかどうかを証明するのは難しい。ただ、ネームやコマ割りが描けると原作者としての需要は上がります。

朝霧先生:ネームは本当に大事です。イラストの才能を持つ人が100人いたら、話が作れるのは30人、ネームでテンポを作れるのは20人くらい。いちばんレアです。でも習得は意外と簡単で、ヒットしている漫画を模写すれば上達できます。1日1時間を3ヶ月。ネームが書けると本当に重宝されます!

【4. キャラクターを構成するのに大切な6つの要素とは?】

後半は『文豪ストレイドッグス』の誕生秘話として、加藤様との話し合いの中で、「文豪に能力バトルをくっつけたら面白いんじゃないかというアイデアからスタートしたこと」、「こんなキャラクターでこんな異能力だったら見てみたいと思えるところを探し、1キャラあたり約1週間かけてアイデアを練っていたこと」を明かしていただきました。

――キャラクターは、どうやって練るんですか?

朝霧先生:キャラクターがすべてなんです。構成する要素は6つあって、デザイン、性能、属性、関係性、物語上の役割、エピソード。性能は、強い、賢い、足が速いなど、そのキャラが持っている力です。属性は、ビビリ、ヘタレ、俺様、変人、天然などの性格ですね。この6つがバラバラだと散るので、1つの方向にまとめて、短い言葉で説明できるようにすることが大事です。

【5. 在校生からの質問コーナー】

講義の後半には、在校生との質疑応答の時間も設けられました。

――創作をこれから仕事にしていくにあたって、表現力や技術以外に何か大切なことがあれば教えていただけると嬉しいです。

朝霧先生:僕が大事だなと思うことは「ランキング1位のものの良さと自分の好みをすり合わせておくこと」です。漫画原作には、商品として「いかに売れるものを出すか」という視点が求められます。「どうやったら売れるか」と意識的に研究し始めた時点では、もう遅い。もっと早い段階で、プリミティブな感覚として、マスの人が楽しむものを自分も楽しいと思えるように、自分をある種“洗脳”していくことが最初にやるべきことです。それができるようになると、自分がワクワクするものが、自動的に日本中がワクワクするものになります。

――『文豪ストレイドッグス』には実在の文豪が登場します。編集者から気をつけるように言われたことや、ご自身で注視して調べたことがあれば教えてください。

朝霧先生:まず、実在の文豪やその作品を愛する方々へのリスペクトを失わないこと。悪役にする場合でも、筋が通っていて分かりやすく、できればファンがつくような人物像にすることを意識しています。

加藤様:いまの時代においては、そうした気遣いや優しさが読者にもきちんと伝わるのだと思います。

【6. メッセージ】

――漫画原作者や小説家、シナリオライターを目指す方に向けてメッセージをお願いします。

朝霧先生:若い頃にやるべきは「複利で利いていくスキル」を身につけること。本をたくさん読んで、面白さの基礎をインプットしておいてください。もうひとつ、「ランキング1位の良さと自分の好みをすり合わせておくこと」。売れ方を研究しようと思った時点で遅い。もっと早い段階で、マス(大衆)が楽しむものを自分も楽しいと思えるようにしておきましょう。

加藤様:自分の世界を持っていること。そしてそれをアウトプットできる力を磨いてほしいです。

朝霧先生:ひとつアドバイスをさせていただくと、編集者の言う「ここが面白くない」は信じる。でも「どう直すか」までは真に受けなくて良い時もあります。

加藤様:新人さんは真面目だから直そうとしすぎますよね。でも図々しく渡り歩いてきた人のほうが行き残ると思います。

最後に、朝霧カフカ先生より応援メッセージが送られました。
「大変楽しくて、皆さん熱心に聞いていただいて本当にありがたかったです。僕は『この世界に飛び込みたい』と思っている人たちの情熱がすっごく好きで、応援したいなと思っています。これからも頑張ってください!」

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【PROFILE】

朝霧カフカ
作家・漫画原作者・シナリオライター
1984年生まれ。『ヤングエース』(KADOKAWA)で連載中の『文豪ストレイドッグス』が大ヒット。小説に『文豪ストレイドッグス 太宰治の入社試験』(角川ビーンズ文庫)がある。

加藤浩嗣
株式会社KADOKAWA
出版事業グループ カドコミ部 部長 兼 カドコミ編集部 編集長 兼 ヤングエース編集部
朝霧カフカ先生の担当編集として『文豪ストレイドッグス』に携わる。過去の代表的な担当作品に『異世界居酒屋「のぶ」』『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』『長門有希ちゃんの消失』『Fate/Zero』『ブラッドラッド』『いなり、こんこん、恋いろは。』がある。

※プロフィールはいずれも2026年3月時点

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