「アイドルマスターシリーズ」を600億円もの市場規模まで成長させた立役者、坂上陽三さまによる講演会

授業/特別講師/講演会
東京校
アニメ学部
声優学部

KADOKAWAアニメ声優アカデミーでは業界第一線で活躍する方々をお招きした講演会を開いています。
今回は、在校生はもちろん入学前の来年度入学予定のみなさんも参加して行われました。

お迎えしたのは、株式会社バンダイナムコ スタジオで、スーパーバイザーを務める坂上陽三さま。「アイドルマスターシリーズ」の元・総合プロデューサーで、シリーズのファンからはガミPの愛称で知られています。(アイドルマスターは、以下「アイマス」と表記)

クリエイター業界での心構えや、声優志望なら気になるキャスティングのことまで、学生たちからの質問をもとに、坂上さまにお話を伺っていきました!

■クリエイティブ業界に入ったきっかけを教えてください。

中高生の頃は漫画家を目指していましたが、その後は「映画を撮りたい」と考えるようになり、大阪芸術大学へ入学します。

卒業後は映像のプロダクションに入り、撮影クルーとして、報道の仕事をしてましたが、殺人事件などを追いかけたり不幸なことばかり見ていると、「なんて国なんだ!」と思いがちで鬱な気分になりがちでした。

それから1991年にナムコに入社。映像と関連することから、ゲーム業界に転身しましたが、入社してからパソコンに初めて触れる、といった時代でした。当時はゲームを4、5人で作っていたこともあり、ディレクターから指示が下りてくるものでもなく、ペラ紙を見てプログラマーが組んでいきました。

プログラムは0、1の数字で組まれているので、曖昧で感覚的なことをプログラムとして組めるようにロジックを組み立てて設計する必要があります。それを考える経験は大きかったと思います。

■アイマスシリーズはヒットしましたが、ヒット作への心構えを教えてください

いかにしてユーザー心理を扱うのかが大事です。

ゲームづくりでは「俺のセンスをみせてやるぜ!」とクリエイターはシーズ(生産者視点)になりがちですが、しっかりとお客さんのニーズ(消費者視点)につなげていく必要があり、その視点が大事です。

例えばアイドルマスターでいえば、ユーザー層は「女の子にモテない人」と考えた時に、なぜ「モテない」と思うのかと掘り下げていくと、誰もが共通して感じている「自分の存在価値」に行きつきます。人は存在価値を求めており、それが満たされるものに対して消費行動をとり、ものを買うということはあるので、まずはそれを理解していくことから始めます。それはアニメでも漫画でも共通すること!

これをいかにして大事にするかです。相手の心理に深く潜っていくことは面白いですし、この経験はとてもタメになりました。

■学生のあいだにやっておくと良いことを教えてください

結果論で言うと、「いろいろなこと、興味あることをやったほうが良いです」が答えとなります。ストレスなく続けていけることをするのが良いです。私の場合は映画を観ることでしたが、忙しくても今はスキマの時間で見られます。
例えばNetflixなどで洋画を観ていると、時代性を掴めたりしますね。

―そして、学生のみなさんが最も気になることといえば、キャスティングのこと。どんなポイントで採用されるのか、学生たちからも質問があがりました。

■キャスティングオーディションのときに注目するポイントは?

これはものすごく単純なこと。「基本はキャラクターに合っているか、そうでないか」です。「アイドルマスターは、1度受けたらブラックリストに載るのか?」と聞かれますが、そんなことはなく、4回目で通った人もいます。それは単純に「キャラクターに合っているから」という理由で採用されます。

■プロデューサーのお仕事をされた中で、声優に求めることは?

基本は、声のお芝居をしっかりやっていただくことに尽きます。

歌って踊れたほうが良いけれども、歌えない子、踊れない子はいっぱいいますよ。最初のきっかけはお芝居なんですよ。どんなに歌がうまくても踊りがうまくても採用するということはありません。

プロデューサーからしてもそうで、声優が「それで食っていくんだ」と思うならまずは声のお芝居ができることが基本ですし、それができればお仕事は続けていけますね。

初めて舞台で歌ってもらったときには、歌と踊りのバラバラ感がすごくて、「えーっ?」っていうほどすごく衝撃でした。でもこれで良いのです。それを含めてのアイドルマスターですから。一緒に成長していけば良いのです。

■業界で声優の技術以外の能力が必要だとしたらどんなことですか

人間関係の他はないと思います。人間関係は本当に馬鹿にできないと思います。「人たらしになれ」ということではなく、会話として通じているか、曖昧なことを咀嚼できる力があるか、会社でもそういう能力がある人間は大事にされます。

さらにリーダーシップを持っていたり、一緒に仕事しやすい、と思わせたら8割、9割くらいになりますよね。そういう人が突然「ぴこーん」って頭に浮かぶんですよね。そこに入るのは大変なことですが、作品の理解力や応対力などが大事です。

即応力があると何よりですが、まずは会話をしてキャッチボールができることが大事です。会話が苦手な人は、まずはオウム返しするだけでも良くて、すると会話がつながっているような気がします。

まわりにもコミュニケーションが苦手でな頭でっかちな方がいます。その方は文章だととても良いので「筆談でもいいよ」と言いたくなりますが、もし話すことが苦手な人は文章でまとめてみたりと、自分が思っていることを整理すると良いです。

自分のことをまとめてみると、中高生のときには漫画家になりたかったのに、なるのを辞めた理由について、50代になってから気づいた、ということもありました。文章に書いてまとめておくことで「何をやっていけばいいのか」という、自分なりの回答は作れると思います。

■最後に

みなさんは若いので、まだ「自分が進む道はこれが正しいのかな」ってぼんやりしていて曖昧だと思うのですが、それが普通だと思います。可能性はいろいろあるので、今は声優の勉強をひとつひとつやっていくことが、未来につながると思います。

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