【初開催の文豪コネクト特別企画】「作家×編集」公開ディスカッション!梶永正史講師×伊藤ヒロ講師×小学館 文芸編集室・永田勝久さんによるトークセッションを開催

スクールライフ
イベント
授業/特別講師/講演会
文芸学部

KADOKAWAマンガアカデミーでは在学中から、ノベル・シナリオライター、小説家としてデビューするための環境を提供しています。

今回は東京・大阪・名古屋校の文芸学部合同イベントとして初開催された『文豪コネクト』から、梶永正史講師×伊藤ヒロ講師×小学館 文芸編集室・永田勝久さんによるトークセッション「作家×編集 公開ディスカッション!~打ち合わせの真髄に迫る~」の様子をレポートします。

1. 文豪コネクトとは?

「他校舎の生徒ともっと繋がりたい!」
「授業や審査会以外で創作する機会がほしい!」
という声から誕生した、KADOKAWAマンガアカデミー東京・大阪・名古屋校の文芸学部生による交流イベントです。
“connect”の名の通り、業界・スクール・人が繋がり、新たな創作の輪と作品が生まれる。そんな場になることを目指しています。

校舎ごとにチームを作ってアイデアをプレゼンし、投票形式で順位を争うプロットコロシアムや、チームごとにリレー小説形式で物語を書き上げる即興ショートショート「じゃれ本」など、ライトノベル作家やシナリオライターを目指す文芸学部ならではのコンテンツが盛り沢山!
そのなかでも、作家と編集者がどのような話をし、作品をブラッシュアップしているのかー。その一幕を知ることができる目玉コンテンツが本日ご紹介する『作家 × 編集 公開ディスカッション』です。

伊藤講師「出版業界の空気、打ち合わせの様子をおさえていただけたらと思います」

冒頭、喫茶店での名刺交換に始まり「何か飲まれますか?アイスコーヒーでも」と、リアルな掛け合いも披露され、在校生(以下メンバーと表記)から笑いが起こります。

2. 梶永講師が、3つの企画を提案

左から梶永講師、永田さん、伊藤講師

今回はあらかじめ、梶永講師がジャンルの異なる3つの企画案を用意しました。

:『エンマの子』

閻魔大王の息子が主人公のファンタジーコメディ。息子があまりに自由奔放な性格で、正しい量刑を下せるかを案じる閻魔大王。そこで息子を人間界に転生させる。

:『ダチョウは飛ばない』

レースゲームに熱中する高校生の主人公と、事故でレーサーの夢を絶たれた男がタッグを組み、eスポーツの分野で頂点を目指し、再起を描く。

:『レインガール/リアル・ディープ・フェイク』

浅草を舞台とした刑事ドラマで、ジェネレーションギャップがある女性2人の捜査コンビ。日本で約8万人を超える行方不明者がおり、うち9歳以下も1000人前後含まれることに焦点を当てる。

3. 編集者の視点:企画の強度と継続性について

永田さん「まず企画を3つ提示したという姿勢が素晴らしい。版元ごとにカラーがありますし、編集者も得意・不得意なジャンルがあります。作品1点だけでは、企画が通らない可能性も。今回は、小学館の版元イメージを考慮して『エンマの子』を選ばせていただきました。この設定は読んだことがなく惹かれましたので。また、『このキャラクターは10年維持できるのか』『この企画は、10年20年、ずっと先まで作家生活を続けられるようになるために貢献できるのか』という継続性を重視しました。キャラクターにファンがつくことが望ましいですし、シリーズ化すれば、版元としては年間のラインナップを組みやすいという事情があります。また、シリーズ化すれば、作家人生もより長くなるでしょうから」

伊藤講師「案3は、設定が非常にロジカルでカチッとしていますね!」
この後、永田さんは、主人公・閻魔大王の息子の設定がまだ「恵まれすぎ」ていて、ドラマが生まれないと指摘。

梶永講師「なるほど、欠落が必要ということでしょうか」

永田さん「その通りです。人間界に来た瞬間に『能力を無力化される』『一切の力が使えない』という極限のマイナス状態から始めた方がいい。持たざる者がどうあがくか、そこに物語の強度が宿ります。eスポーツ案については、eスポーツに目新しさがありましたが、『ゲームセンターあらし』世代の私のようなおじさんよりも、若い編集者と組んだ方がよいと思いました(笑)。女性2人の捜査コンビ案は、キャラも立っていますし、幼い行方不明者にスポットライトを当てたのが面白いです。ただ、浅草という舞台設定が若干気になりました」とフィードバック。

伊藤講師「すごい勢いで、方針を変えていきますよね。そこまで変える?と思われるかもしれませんが、割とあることです。梶永講師もこのままにしましょうよとは言わなかったですよね。メモを取って直そうという姿勢が見られます」

梶永講師「作家は大工さんだと思います。注文主に、どれだけ応えられるかがプロの仕事です。例えば自分が『二階建てがいい』からといって二階建ての家を作るわけではありません」

4. 「白」と「黒」を描ける作家か?

永田さん「私は作家さんが、『白』と『黒』を描写できるかを見ます。白は誰に見せても恥ずかしくないまっさらな部分。対して黒は邪(よこしま)で悪人の部分です。他人には隠したい劣等感、過去の失敗、どす黒い執着。それがキャラクターに投影されたとき、初めてそのキャラは生きた人間としての説得力を持ちます。自分自身の黒い面から目をそらさないでください。そこを描ける作家さんがいい作家さんだと思います」。また、他社の編集者が作品を読み、作家さんにオファーがいくかどうかも採用基準になると述べ「ただし売れる・売れないには運、縁、時世に合っているか、といった要素が絡みます。才能があってもなかなか売れない作家さんをたくさん見てきました。10年・20年と頑張ると、ある日突然ドカーンと売れたりもします」

5. 生徒から質疑応答

後半は生徒からの質問に答えます。オンラインで参加した名古屋校、大阪校の生徒からも質問があがりました。

―――新人賞をご担当されていたとのことですが、新人賞ではどういうものを求めているのでしょうか。

永田さん「まず、なぜ新人賞を実施しているのかというと、ベストセラー作家を自社から売り出して、できるだけ囲い込みたいからですね。下読みは編集者が行いますが、最終選考は通常プロの作家さんがします。面白いのは、編集者と作家さんが求める作品は必ずしも合致しないことです。作品の質は言うまでもないですが、目新しさと個性のほかに、編集者は売れるか否かを、作家さんは作家として食べていけるかどうかを求めているようです。ただ、最低限クリアしなくてはならないのは、文体ではなく、文章力です。楽器は誰にでも弾けるわけでなく、絵も上手い下手がすぐに分かるので、誰にでも描けるわけではありません。でも、文章は誰にでもそれなりに書けてしまう。そこが落とし穴です。自分自身で上手い下手がわかりづらいんです。出だしからリーダビリティある文章を書けるか、それがクリアされれば1次選考は通過するでしょう。意外かもしれませんが、応募作品のほとんどが、文体ではなく、文章力に欠けているんです」

―――何人くらいの作家さんを担当されていますか。

永田さん「おおよそ、30人から50人くらいではないでしょうか。ちなみに、編集者は数年先の仕事をしています。いまお願いして1年以内に原稿をいただけることはないですから。10年先の原稿をオファーすることもありますね」

―――企画書はどういった形式・長さが多いですか?

永田さん「作家さん次第です。A4サイズ 1枚の人もいますし、最初からプロットをガッチリ考える人などさまざまですね」

―――講師にうかがいたいのですが、企画を考えるときに、意識されていることは?

梶永講師「もしもキャラクターが他の人で代替できるなら、そのキャラである必然性がないと思うんです。キャラは物語と連動するので、後から修正するのは大変です。そうしたことを頭におくといいのではないでしょうか?」

伊藤講師「キャラクター、ストーリー、設定の調和が必要だと思います。ただし調和しすぎると、“ぬるっと”なる場合もあります」

最後に、永田さんより「出版社としては、目新しくて個性的で売れる原稿がたくさんほしいです(笑)。書き手を目指す皆さんは、ぜひ小説以外の本をたくさん読んで、音楽や映像、絵画などにも触れていただきたいなと。特にノンフィクションはネタの宝庫です。頑張ってください」とエールを送りました。

特別授業を受けた学生のMさんは、「編集者さんと作家さんの“自然な”やり取りから、得られるものが多かったです。特に、編集者さんが企画の良し悪しを見極めるポイントも知ることができました」とコメント。

KADOKAWAマンガアカデミーでは、在学中のデビューを支援するイベントを定期的に開催しています。
在校生の皆さんは今回の学びや視点を作品づくりにに活かしていただくとともに、スクールやノベル・シナリオ業界にご興味のあるかたは、ぜひパンフレットを取り寄せて詳細をご確認ください!

PROFILE

永田 勝久(小学館 文芸編集室/株式会社剣筆舎 代表)

徳間文庫編集長、文芸局長、書籍局長、アニメコミック局次長を経て、2018年に退職。2019年、剣筆舎を創業。産経学園の小説講座「プロ作家をねらえ!」講師、天狼院書店「小説家養成ゼミ」ゲスト講師を務める。現在、小学館で編集協力中。

梶永 正史

1969年、山口県生まれ。2014年、『警視庁捜査二課・郷間彩香/特命指揮官』で第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。『組織犯罪対策課・白鷹雨音』(朝日新聞出版)はドラマ化され、『潔癖刑事・田島慎吾』シリーズ(講談社)、『x1刑事・青山愛梨』シリーズ(ハルキ事務所)など、警察小説を中心に作品を発表。近著に『デラシネ 放浪捜査官・草野誠也の事件簿「霧の樹海」篇』(潮文庫)。

伊藤 ヒロ(伊藤尋也)

岐阜県明智町(現・恵那市)生まれ。代表作に『女騎士さん、ジャスコ行こうよ』
『魔法少女禁止法』『異世界誕生2006』『魔王が家賃を払ってくれない』がある。2023年、『土下座奉行』(伊藤尋也名義)で第12回日本歴史時代作家協会賞 文庫書き下ろし新人賞受賞。近著に『綱吉の猫』(光文社文庫)。

シェアする