宮地昌幸さんによるアニメ演出家向けの特別ゼミを在校生向けに実施!

イベント
授業/特別講師/講演会
東京校
アニメ学部

KADOKAWAアニメ・声優アカデミーは2024年5月20日(月)、一期生を対象に特別ゼミを開催しました。
お話をしてくださったのはアニメ監督/ 演出家であり、スクール初登壇の宮地昌幸さん。

宮地さんはスタジオジブリからキャリアをスタートさせ、『エウレカセブン』の絵コンテ・演出や、テレビアニメ『亡念のザムド』、
映画『伏 鉄砲娘の捕物帳』の監督として知られています。

今回はクリエイターとして持つべきマインド、アニメの演出という仕事について熱く語っていただきました。

ものづくり全般に通じる心構えを指南

学生があいさつを返すと「元気がいいですね」と笑顔の宮地さん。

宮地さん は幼少期から漫画を描いたり、映画を観たりすることが好きだったといいます。
高校生時代の部活動で8mmフィルムによる映画を制作した経験もあるそうです。
カルチャー全般が好きで、日本大学芸術学部に入った後、宮崎駿監督が主催する東小金井村塾に入り、研鑽を積みました。

宮地さんは、今回の授業の趣旨を次のように話しました。

「この講座ではアニメ業界についてだけでなく、ものづくり全般に言える普遍的な心構えについて話をします。夢を見過ぎてアニメ業界に入ると、現実を知った時にしんどい。だから、甘くない話にも触れたいと思います。

多くの人は『何となく』でアニメ業界に入ってくる。自分の好きなことや才能を知っていれば、早めに方向転換ができます。だから、自分自身を見つめてほしいですね」

アンケートの批評

学生は事前に「今、何を勉強しているか。自分が学んでいることを他人にどう伝えるか」
「自分を作ったと思う5作品」「アニメの演出とはどういったものだと思うか。アニメ業界について聞きたいこと」の3つの質問が書かれたアンケートに回答。
宮地さんはそのアンケートを批評しつつ、時にスライドを使用して説明や回答をしました。

「自分を作ったと思う5作品」という問いについて、宮地さんは、

「アニメ以外の表現にどれだけ触れているかが大切。演出家になるには総合的なことを知らなければいけません」

と、設問の理由を述べました。

「自分の大切なもの、好きなものがわかっていない人がけっこう多い。まずは、自分の『好き』を知ること。それが作り手としての指針になるはずです」
宮地さんは授業内で「自分の好きを知ること」を繰り返し強調。うなずきながらメモを取る学生も多く見られました。

学生のアンケートで、「アニメーターとして生き残るためにやっておくべきこと」を問われた宮地さんは、
「絵の勉強は前提として、たくさんの本を読んで考えを深くすること」 と回答。

「全てのものづくりの根本には本がある。アニメや映画の視聴は受動的ですが、読書は能動的に行うので、自ら動かなければいけません。本を読んで批評と分析をし、深く入る。すると、自分の好きなことが見つかります」

演出家という仕事について

演出家とは、「絵コンテ+演出処理」 というのが宮地さんの考え方。
アニメーション制作を調理に例え、材料や調理手段を用意したり、調理時間を考えたりするのが制作と演出家、
それを調理するのがアニメーターと撮影の仕事。それ以前にレシピを用意するのが演出だといいます。

また、宮地さんはコストパフォーマンスを求める現代にも苦言を呈します。

「メリット、デメリットではなく、プロセスで考える。プロセスを経ないと実感や達成感は手に入らないし、筋肉が付かないんです」

授業開始以降、一度も座ることなく、身振り手振りを交えて話を続ける宮地さん。そんな宮地さんから、とてつもない熱量を感じた学生も多いはずです。

アニメーションの歴史

続いてのテーマは、アニメ制作の変遷です。アニメ制作が始まった1906年から現代に至るまでの歴史について、
社会情勢、文化、アニメ制作会社の特徴、アニメ業界の巨匠 たちのエピソードを交えながら話をされました。

「スタジオジブリは子どものためのアニメを守ろうとしていた最後の制作会社。子どもを社会に作り出すことを前提に制作していたので、性的な表現や暴力の描写がなかったんですね。皆さんには作り手として『駄菓子に毒を混ぜないで 』を少しだけ意識してほしいです」

と、訴えました。そして、

「アニメの歴史はこんなにも長く、この中の現在地に僕たちは立っています。歴史を知ると、自分がどのようなバトンを先人から渡されているのか、客観的に見えて面白くないですか?」

宮地さんはそう笑顔で問いかけました。

最後に再び学生のアンケートを批評。「演出という仕事がわからない」という学生の回答に対し「これが一番共感する」と宮地さんは言います。

「演出の仕事は、時代と共にやるべきことが変わっていきます。アニメの歴史を見ればわかる通り、いつの時代だって過渡期です。今までのやり方に固執するか、時代に合わせて自分が変わるか。『自分の演出とは何か』を考える禅問答をする毎日です」

このように話し、演出家という仕事の奥深さをまとめました。

休憩時間には学生が自主的に宮地さんへ質問をすることも。宮地さんは丁寧に向き合い、助言を行っていました。

今回の授業は学生にとって、作り手としてアニメ制作に向き合う大きなきっかけになったのではないでしょうか?

宮地さん、刺激になるお話をありがとうございました!

シェアする