「あなたが信頼できる編集者を見つけてください」コミックNewtype編集者・岡本渉さんが語る、マンガ家と編集者の仕事

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マンガ家として作品を世に出すとき、いちばん近くで伴走するのが編集者です。その編集者は、ふだん何を考え、どのようなお仕事をしているのでしょうか。9月14日、KADOKAWAマンガアカデミー東京校で「編集・出版概論2026」が開かれました。登壇したのは、KADOKAWAのWEBコミック誌「コミックNewtype」で編集者を務める岡本渉さん。出版業界の仕組みからマンガ家の収入、編集者の役割までを語る講義のあと、メンバー一人ひとりの作品に対して編集者がフィードバックする「持ち込み」の時間が設けられました。

 

1.マンガ家としてキャリアを築くためには
前半は出版業界の見取り図です。岡本さんはマンガ出版社を「一般向け」「電子書籍」「成人向け」に区分して紹介。

「一般向けの強みは、全国の本屋さんに自分の名前が入った本が並ぶ可能性があることです。電子書籍は連載ペースを落とさないことが大切で、1カ月更新がないと売り上げが30%落ちることもあります。長期で休むことは読者の離脱につながる。とてもペースの速い業界だと思います」

電子書籍の一般論として「6話は保証されますが、売れなければ次、という業界です」とも語ります。ハイペースな業界だからこそ岡本さんは、1人の編集者あるいは1社に頼りすぎないことを推奨。「編集者はたくさんいます。だからこそ、1人に固執する必要はありません。コミティアの出張編集部に行けば、いろいろな編集者と出会えます」

出版社から作品を出す以外にも、同人誌で発表する道、イラスト・マンガの制作会社で会社員として描く道、Skebやココナラなどから依頼を受ける道もあります。「働き方から出版社を選んでもいいんです」と岡本さんは選択肢の幅を示しました。

2.マンガ家の主な収入源は?
講義で時間を割いたのが、お金の話です。マンガ家の収入は、原稿料、印税、WEBやアプリのインセンティブ、二次利用のロイヤリティに分かれます。

「マンガ家は完成原稿を納品しなければ収入はありません。マンガ家として長く活動していくと、少しずつ単価も上がっていきます。マンガ家を続けていかないとチャンスはありません。続けていくためにどうしたらいいかを考えてください」

また、印税率は会社によって設定が異なります。「1巻目の売り上げはとても重要です!初版の1巻目はとにかく勝負。やりすぎというくらい、SNSなどでアピールしていいと思います」と強調し、「作品作りと並行して、ぜひお金の勉強もしてほしいです。個人事業主として働くので、確定申告もあります」と続けました。

3.編集者は、プロデューサーであり、マネージャーであり、パートナー
では、編集者は何をしているのか?岡本さんは、プロデューサー、ディレクター、マネージャー、スカウトマンという4つの側面を1人で担っていると説明します。

「作品の魅力が何なのかを一緒に考え、作品の面白さを誰よりも信じます。テーマがぶれると、作品はとたんに面白くなくなる。僕らはパートナーです」

マネージャーとしてアシスタントを探したり、取材の撮影に同行したりすることもあり、「ちょっとしたことでも気兼ねなく相談してほしい」と岡本さん。スカウトの入り口は持ち込みや投稿だけではありません。「SNSはどんどんやってください。自分自身のファンをつくれる可能性が上がりますし、フォロワーが多いことで変なお仕事を避けられる、自衛のメリットもあります。バズれば、出版社の人間から声をかけてもらえる可能性が上がります」

講義の最後には、メンバーからの質問に答える時間もありました。持ち込みや賞への応募について、岡本さんはこう伝えます。「持ち込みや賞に応募するときは、自分の“フェチ”を全力でぶつけてください。作品の核になるものが分からないともったいない。恥ずかしがらずに、作品に自分の好きを詰め込んでください」

4.編集者も「自分に求められることは何か」を考える
「作品を立ち上げるとき、オリジナルはハードルが高いです。コミカライズなら『こういう展開で』と会議でも説明しやすい」。岡本さんが約2年前、コミックNewtypeに加わって最初に考えたのは「自分に求められることは何か」でした。

そうして生まれたのが『小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった』(漫画・甘露アメ/原作・ゆめいげつ)。2024年11月にマンガ家の甘露アメさんと知り合い、2025年4月に小説投稿サイト「カクヨム」経由で原作者のゆめいげつさんに連絡。2026年3月の連載開始から3日後に10万PV、半年で80万PVを突破し、今年12月には単行本が発売予定です。

「単行本の帯に『何十万部』と書けるような作品を、作家さんとチームになってつくれたらうれしいです。作品をつくる仲間だと思ってください」

5.「コミックNewtype」出張編集部がアドバイス

講義のあとは、コミックNewtype出張編集部による持ち込みの時間です。メンバーは約20分間、編集者から作品の良い点と改善点の両方を聞きます。

読み切り作品を2本持ち込んだ高等部 マンガ・イラストレーター専攻 3年次・安藤小雪さんは、「自分の悩みをマンガで描いていることを話したら、『自己満足的なものが入っているから、読者を楽しませる仕組みをつくるともっとよくなる』と。ほかの編集さんには言われたことがありませんでした。これからは悩みをそのまま描くというより、面白さのスパイスを加えるぐらいの感覚で入れようと思いました」と話します。

「アイドルの推し」をテーマに19ページの読み切りを持ち込んだ高等部 マンガ・イラストレーター専攻 2年次・坂爪咲月さんは、視点の切り替えについて指摘を受けました。「最後のページでは、主人公じゃないキャラがメインとして描かれているのがもったいない、と言われました。以前ほかの出版社の編集者に見せたときは、逆にそのシーンが『効いている』と好評だったんです。編集者さんによって異なる意見を聞くことができたので、とても貴重な体験でした」

坂爪さんは、ネームを描く前に「ネームラフ」を描いて、作品の構成や展開をブラッシュアップしているといいます。

16ページの少女マンガのネームを見せた高等部 マンガ・イラストレーター専攻 2年次・三宅椛さんは、話の展開の速さを褒められた一方で、男の子と女の子の関わりが「さっぱりしすぎ」と指摘されました。「『シーンを増やしたほうがいい』と具体的に教えてくださったのが分かりやすくて、実践しやすいなと思いました。アドバイスをもらったことで、それを直せば今よりうまくなることが確実なのでうれしいです」と声をはずませました。

講評を終えると、コミックNewtypeの編集者がメンバーに名刺を渡しました。

講義を通して岡本さんが繰り返したのは、「自分自身と合う編集さんをぜひ探してほしい」ということでした。「人と人なので相性があります。合わないといい作品になりません。長く一緒に仕事ができる、あなたが信頼できる編集者を見つけてください」

【PROFILE】

岡本渉(おかもと・しょう)さん

KADOKAWA「コミックNewtype」編集者。大学3年のとき、周囲を巻き込んだ合同誌の企画をきっかけに編集者の仕事に興味を持ち、「周りに宣言していたら、若い編集者を探している出版社を教えてもらえた」ことから、大学卒業後に成人向けマンガ誌の編集者としてキャリアをスタート。2019年には電子書籍専門出版社へ転職する。2023年には新レーベルを立ち上げ、ヒットタイトルを生む。2024年11月にKADOKAWAへ入社。2026年現在、担当連載は9作品、うち新規立ち上げは7作品。

 

コミックNewtypeは、KADOKAWAが運営する、人気マンガが読めるジャンルレスのWEBコミック誌。隔週連載と月刊連載があり、作家のペースに合わせて選べるのが特徴。新人向けの「月例賞」も設けている。

コミックNewtype https://web-ace.jp/comicnewtype/

WebNewtype(アニメ情報誌「月刊ニュータイプ」公式サイト) https://webnewtype.com/

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