24.09.01 24.11.30 更新

小林千晃さんスペシャルゲストオープンキャンパス

授業/特別講師/講演会
大阪校
声優学部

2024年7月28日に開催された、KADOKAWAアニメ・声優アカデミー大阪校のオープンキャンパス。スペシャルゲストとして声優の小林千晃(こばやしちあき)さんをお招きしてスペシャルオープンキャンパスを開催しました!

小林千晃さんといえば、『マッシュル -MASHLE-/マッシュ・バーンデッド役』『SK∞(エスケーエイト)/馳河ランガ役』『葬送のフリーレン/シュタルク役』ほか、数々の人気作でメインキャラクターを演じる注目の若手声優です。

2019年には、『ブギーポップは笑わない』『賢者の孫』など、KADOKAWAのライトノベルが原作のアニメに出演し、2020年には、『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』でアニメ初主演。2021年には声優アワード新人男優声優賞を受賞されています。

今回のトークショーに参加したのは、在校生と声優を目指す中高生たち。
斎藤ゆうすけ講師(KADOKAWA漫画アカデミー ノベルシナリオライター専攻)による司会進行のもと、声優を目指したきっかけから、オーディションのコツまでたっぷり語っていただきました!

『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』でアニメ初主演を果たされたときの気持ちは?

「すごくうれしかったですね。ガンダムシリーズは僕も見ていましたから。特にガンダムを担当された音響制作会社さんは、1話の中でもひと言ふた言しか台詞のない“モブ”で参加していたような新人時代からお世話になっていたこともあり、ご一緒できたことがうれしかったです」

KADOKAWA作品で思い出に残っているものはありますか?

「『ブギーポップは笑わない』の竹田役は、初めてオーディションで受かった役なので今でもすごく覚えていますね。当時はオーディションが月1本あるかないか。何日も入念に準備しても落ちていましたが、竹田役に受かったのは、新人の頃、がむしゃらに頑張っていたことが良かったのではないとか思います」

「これまで1話はコンビニ店員B役、2話は生徒C役など、演じる人物は違うけど毎回呼んでもらえるレギュラーはありました。でもメインキャラクターだけの回になると、アフレコ現場には行けません。竹田役は初レギュラーです。出ずっぱりではなくとも、要所でメインキャストやスタッフの方々と接しつつ、アフレコ現場にいられました。作品への向き合い方もすごく変わったきっかけになったので、今でも感謝しています」

声優を目指したきっかけを教えてください。

「子どもの頃から色々なことに興味がありましたが、一貫して好きだったのは映画。役者になりたいという想いも漠然とありました。それで高校に行きながら、俳優養成の学校に通っていました。でも“役”に合う人が見た目で選ばれることもある世界。自分のやりたい役はできない、俳優も無理かもしれないと歯がゆい時間を過ごしていました」

「もともとゲームやアニメ映画も好きだったのですが、日本のアニメ映画は海外の実写にも負けないスケール感があり、世界中で見られるコンテンツだなと感じるようになりました。それで声優というお仕事に興味を持ち始めました。声優の勉強はしたことがなかったのですが、一応お芝居の経験があったのでオーディションを受けたら、特別賞をいただきました。それが自信につながり、本気で声優を目指すようになりました」

オーディションを振り返って何が良かったと思いますか?

「正直、お芝居はあまり評価されませんでしたが、僕の場合は自己PRが良かったと言われました。普通の企業に入るときも自己PRは必須ですが、やっぱり声優や俳優にも自己PRって一番大事なことです。自分の体験談を自分の言葉でつくることなく伝えるって大事だと思います」

「あと経験に無駄はないと思っています。たとえば、1回就職して声優を目指す人もいますが、そっちのほうがプラスになると思うこともありますね。バイトもいい経験です。
バイト・学校・家族など、異なるコミュニティでの自分も役作りのヒントになります。色々な経験を積んでほしいですね」

声優の仕事をする中で、どのような訓練をしていましたか?

「僕は好きなお芝居がはっきりと決まっています。だからこそ、好きじゃないものは、なぜ好きじゃないのかを考えたり、吹き替えや舞台鑑賞でも何が好きかを確認したりしています。骨格が違うと表現できる幅も違うので、どういうニュアンスなら僕が組めるかとかも研究していました。好きじゃないと続かない、突き詰められない仕事だからこそ、探究心が湧いてくる人のほうが強いと思います」

役作りで大切にしていることは?

「実はあまりしていないんです。原作のある場合も、必要なときは読みますが、読まないほうがリアルな芝居ができそうであれば読まないとか。臨機応変にしていますね」

「僕のやり方ではないですが、“その役が嫌いなものを探すといい”と聞いたことがあります。この役が嫌なことは「友達から手を出される」とか「人混みが苦手」とか、どのようなしゃべり方をするか、逆に何が得意かを逆算して役づくりをするわけです。好きなことや“生きたい“って人それぞれですが、「危険」や「死にそう」は明確に言葉にできるといった、マイナスを見つけるほうが役作りしやすいのかもしれないですね」

キャラクターの感情分析をすごくされている印象ですね。

「役と向き合うときもありますが、気分屋なところもあるので直感的にやるときもあります。本当に分析が好きならいいですけど、分析ばかりだと作業になってしまいます。直感的なお芝居は、新鮮な体験。それで違うと言われたら、分析する方法を試してみればいい――。仕事をずっと好きでいるためにも、自分を飽きさせないためにも、自分のご機嫌取りも兼ねて、色々な役作りの方法に取り組んでいますね」

「すべては自分の心と体が健康じゃないとできない仕事なので、平常心を保つため、一定のパフォーマンスを出すために、自分のご機嫌を取ることは不可欠です」

本日は在校生も来ています。学生のうちにやっておいたほうがいいことは?

もちろん、若手を含めて信じられないくらい人がいる中で、個性を突出させるのは大変です。感性が被っていると、上のほうでは勝てないですから」

「僕は大学生の頃、建築物が好きで写真を撮りに行ったり、宅建の資格を勉強したりしていました。年間300~400本くらい映画を見ていたこともあります。だから今は映画をあまり見なくても知識や好きな作品がパッと出ます。当時はあまり共感されなかったのですが、逆にそれがうれしかったですね」

オーディションの自己PRも、まさにこれですよね。

「そうですね、でも意図的に、興味を持ってもらうためにやろうとするとダメなんですよ。本当に興味のあることを自分の言葉でしゃべることが一番大事かもしれないですね。“これ話さなきゃ”とか、“これが好きな自分”を見てもらおうとすると、大人はすぐにわかっちゃうので(笑)」

ほかにもオーディションで気をつけたほうがいいことは?

「オーディションで名前を伝えるときは地声がいいと思います。地声も参考にしているので、もっと自然にしゃべってねと言われると思います」

「あとはシナリオの先生を前に言うのもなんですが、文章にしないのも大事かな。噛んだらどうしようとか不安もあると思いますが、書いた言葉をその通りに話そうとすると、伝わってこない。“これを言おう”になってしまうので、好きが伝わってこないんです。とにかく“私はこれが好きです、得意です”を言うだけでもいい。30秒のアピールが10秒で終わってもいいと思います」

小林さんのルーティーンは何ですか?朝起きてどんな準備をしているか、みんな気になるみたいですよ。

「新人の頃はボイトレに通っていて、起きて5時間経たないと人間の声帯は開かないと言われていました。でも声優の仕事は10時スタート。逆算して5時には起きなければならない。現実的ではないと感じつつ、4時間前には起きようとしていた時期もありました。でも僕の場合は、睡眠をいっぱい取らないと声が出ないなと思うようになって、最近はギリギリまで寝ていますね」

「あと台本チェックは前日までに済ませるようにしています。前日に済ませておけば、台本をカバンに入れて、忘れ物もしません。これはルーティーン化していますが、それ以外はないですね。日による違いを楽しんでいます」

「あまり体を壊すことがなく、心の水準を一定に保っているので、精神も乱れません。常に自分の機嫌を取っていて、飽き性だとわかっているので自由に過ごしていますね。若い頃は真面目な人が多く、世間的にも真面目なほうが評価されることも多いので大事なんですが、“真面目を装う”のも大事です(笑)」

初めて声優の仕事をして感じたことを教えてください。

「楽しかったですね。最初は俳優を目指していたので、声優の仕事が思っていた楽しさとかけ離れているんじゃないかと思ったこともしました。でもプロの現場に行くと本当に皆さん素晴らしく、楽しいなってすごく思えました。声優になったら1日目を楽しみにしてください」

基礎を身につけるうえでやっておいたほうが良いことは?

「声量は大事ですね。たとえば“もっと大きい声出して”と言われた場合、小さいことを大きくするって結構大変です。でも“やり過ぎだからもう少しコンパクトにして”という要望には応えやすい。大きい声が出せるって当たり前のようでできていない人が意外と多いです。ぜひ腹式呼吸を身につけて現場に出てください。滑舌よりも発声が100倍大事だと僕は思っています」

台本をもらって最初にすることは何ですか?

「アニメの吹き替えの場合、台本と映像を同時に送られてくるのですが、まずは台本を1冊の小説のように読んでいます。その時に何を思うかをすごく大事にしていますね。“面白かった”とか“あそこが嫌だった”とか感情が出てくると思うんです。他の人に話しちゃうと、別の意見が見えてきます。そんな風に思わなかったけど、そう思ったほうが知的に見えるといった理由で、自分の意見を変えちゃう可能性もあるでしょう。そうではなく、自分の思ったことを誰とも共有せずに大事にしまっておく。自分がブレると個性がなくなってしまうので、これを大切にしています。こっそり読んで誰とも共有せずにやってみてください」

表現する際に心がけていることは?

「基本的に現場でこんな感情でやってと言われることはありません。というのも目的が大事です。たとえば泣いているシーンでも、怒りなのか悲しみなのかが大事なのではなく、本当は何が目的で泣いているかが大事。対峙する人物が自分に対して憎しみを抱かせる存在だからとか、立ち向かっていきたいけど実力がないからとか。目的がすごく大事なので“何で?”を常に探求してみてください」

これからやってみたいことは?

「声優は、色々なところからインプットしてアウトプットするという仕事です。最終的に人間力が、声優力というか役者力につながると思います。この人間力は仕事だけではなかなか埋まらないものです。“○○に行ってこんな体験をしてきた”とか“全然知らない海外の人と友達になって、その人とどこかへ行く”とか、プライベートで充実したものをさらに仕事に還元できるようなサイクルがつくれる30代、40代を過ごしたいと思いますね」

最後に、今日1日通していかがでしたか?

「色々とお話ししましたが、ラジオで聞いたくらいにとどめておいて、自分の中で噛み砕いて、今日の体験を育んでいくことが大事だと思います。“今日”という時間を皆さんと共有できてうれしかったです。初めて専門学校で話をさせていただきましたが、自分の考えを改めて思い出せたので、すごく楽しい時間になりました。ありがとうございました!」

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