【オープンキャンパス】アニメ『わたしの幸せな結婚』久保田雄大監督が語る!“作品づくりの裏側”と“業界で求められるスキル”とは?
KADOKAWAアニメ・声優アカデミーでは、アニメ『わたしの幸せな結婚』とコラボしたオープンキャンパスを開催中です。
11月上旬に、アニメシリーズの監督を務めている久保田雄大さんをお迎えしてのスペシャルトークイベントを開催しましたのでその模様をレポートします!
「監督を務めさせていただいております、久保田雄大と申します。よろしくお願いします」とご挨拶。
KADOKAWAアニメ・声優アカデミー ノベルシナリオ専攻・斎藤ゆうすけ講師が
インタビュアーとなって進行していきます。
【1. アニメ監督のお仕事について】
―― そもそも、アニメ監督は、どんなお仕事をされているのか教えてください。
久保田監督(以下同)「企画が始まりオファーをいただいてからは、作品の最後まで面倒をみます。アニメ制作には数多くのフローがあり、各所で目を通す作業があります。シナリオ、絵コンテ、作画のレイアウトチェック、原画、撮影と多岐にわたりますが、基本的にはクオリティを担保していく仕事だと思います」
―― どんな脚本家さんがいらっしゃるか把握することも大事ですよね。
「そうですね、脚本家さんも数多くいらっしゃいますので、過去のお仕事のつながり、知り合いのツテなどを頼りに情報収集をしつつ選んでいきます。『わたしの幸せな結婚』テレビシリーズの第一期では、フレッシュな脚本家さんにお願いしました」
―― シナリオができたら絵コンテの作業ですよね。絵コンテから先は各パート責任者に任せる場合もありますか?
「絵コンテチェックは監督が行いますが、話数が動き始めると各話の演出家・ディレクターさんがいらっしゃるのでお任せします。お伝えしていたこととズレがある場合には、修正をお願いすることもあります」
―― 絵コンテを自ら描く監督さんもいますよね。絵を描くスキルは必須ですか。
「絵が描けなくても監督になる人はいます。ただし、個人的には描けないよりも描けたほうがいいと思いますし、勉強していたほうがいいです。必ずしも絵がうまい必要はないのですが、人に伝えることができると良いと思います。」
例えば、「神妙な面持ちの主人公」と言葉で書かれても、伝言ゲームのようにどんどん変わる可能性があるため、表情を描いたほうが明確だと説明されました。一方で、細かく指示を書き込むことで、予期せず表現が跳ねるような嬉しいアクシデントが起きにくいデメリットもあるとお話しされました。
―― テレビシリーズの第二期は小島監督とお二人で監督をされたと思いますが、役割分担は?
「一期最終話スケジュールと、二期スタート時期が絶妙に重なってしまい、小島監督にお願いして共同監督という座組みになりました。小島監督には脚本・設定などの開発段階のところをメインに面倒をみていただきました」
【2. アニメ業界を目指したキッカケ】
―― なぜアニメ業界を目指されたのでしょうか。
「父親が映像系の仕事をしており、漠然と映像業界にいきたいと思っていました。地元が青森なのですが、アニメに触れる機会はそれほど多くなくて。大学に進学し、映画学科で実写を撮影していましたが、映画監督になる具体的なビジョンやルートが見えなかったんです。振り返ってみると、アニメの世界に目を向けるキッカケは、GLAYの『サバイバル』というアニメーションPVです。アーティストが映らずアニメーションのみで構成されているのが斬新で、印象に残っていました。その『サバイバル』を手掛けていたアニメーション制作会社『STUDIO4℃』に就職することに。就職後は、『Transfer』などのアニメーションPVを制作しました」
【3. 『わたしの幸せな結婚』制作秘話】
―― 本作は、小説が原作ですよね。アニメ化するにあたり気を付けたことは?
「小説を読んだときに、世界観、キャラクター、所作などすごく素敵な部分が多く、そこを支持するファンが多いと思いました。作品の大事な部分は壊さず、ただ単になぞるだけでは……とも考え、キャラクターの機微・台詞もそうですが、音楽の使いどころは、特にこだわりました。例えば、音楽がかかっていてほしいシーンでは音楽の力を借りながらも、でもやり過ぎず、作品の世界観を構成できたらという思いで作っていきました。自分が思う“わた婚感”は提案できたのではないかと思います」
―― BGMは、監督側から発注されるのですか?
「音響監督が主導しますが、どういった曲が欲しいかは決めます。あるシーンを想定して発注した曲を、別のシーンで使うこともあります」
―― 特に思い出のシーンはありますか?
「一期12話で、絵コンテをハーフパート書いています。美世が清霞の夢に入り助け出そうとするシーンですね。6話もとても評判が良かったです!」
―― キャストさんとの話し合いで、特に印象に残っているところは?
「斎森美世役を演じた上田麗奈さんと美世の気持ちのスタート地点をどうするか、はお話をさせていただきました。清霞に出会う前、出会った後で変化がありますが、最初の落ちている部分のコントロールですよね。上田さんがすごくお上手で助けられました。
声優さんが演技をあてるとき、絵はほとんど完成していない状態です。なので、声優さんの演技・お芝居に合わせて絵を仕上げることも多いですね」
【4. アニメ業界を目指すみなさんにアドバイス】
講演会終盤は、アニメ業界を目指すみなさんへアドバイス!挙手してもらうと、声優、アニメーター、アニメ監督を目指す学生が多いことが分かりました。
「声優さんを目指す人にアドバイスをすると、芝居が型にハマっちゃうケースがあります。期待を良い意味で裏切ることができると良いと思います。お芝居のヒントは、アニメと関係ないところにもアイデアが転がっていたりします。
アニメーターさんは、忍耐の仕事だと思います。絵を突き詰めるスペシャリストであり、技術職だと思います。モチベーション維持の仕方ですよね。僕の場合は、良い意味でも悪い意味でも『寛容』になることを心がけています。寛容なメンタルを持ちましょう。
アニメ演出・監督は、ありとあらゆるシーンで引き出しの多さが必要になります。平均化されてしまうと頭ひとつ抜きんでることができません。なので、何か1つでも自分が打ち込めることを見つけ、強いパッションがあると良いと思います」
【5. 学生からの質問タイム】
―― 明治・大正を思わせる時代の雰囲気をアニメ化するうえで意識されたことは何でしょうか。
「実は、時代については明言をしていません。なので、明治・大正のような世界です。ただ、すべてが創作というわけではなく、ロケハンをしたり現実感とのバランスを取るようにしました」
―― 監督として、声優さんに求める仕事のやり方とはどのようなものですか。
「『型』にハマらないでほしいです。みんながみんな同じ芝居をするのではなく、自分の強み・個性を出してもらえると良いと思います」
―― 今後のアニメ業界で仕事をするのに必要なスキルは?
「忍耐力です。どうしても下積みのような期間があるかもしれませんが、乗り越えてポジションをつかんでもらえたらと思います」
【6. エンディング】
―― 最後に、メッセージをお願いします!
「令和の時代は、アニメという地道な作業がともするとキツく見えたりもするかもしれません。それでもそれぞれの分野で、スキルを高めていっていただけたらと思います。『わたしの幸せな結婚』も新作アニメの制作が決まり、現在鋭意進行中です。公開されましたら、ぜひ観てください!」とメッセージ。
活躍するプロフェッショナルの考え方、業界で求められるスキルについて理解を深めることができました。
久保田監督貴重なお話をありがとうございました!
KADOKAWAアニメ・声優アカデミーの特長は、業界トレンドを押さえたカリキュラム。
トップクリエイターを招いた特別講演会も、豊富に実施しています。
「アニメ・声優」業界に興味がある人は、ぜひイベントに足を運び、進路選択の参考にしてください!
【PROFILE】
アニメ『わたしの幸せな結婚』監督。TVアニメーション、劇場アニメーションのコンテ演出参加のほか、TVCM、PV、グラフィックデザインやコンテンツ企画のディレクションなど幅広く活躍。