今年 4 月に開校し、初めての夏休みを迎える KADOKAWA アニメ・声優アカデミー。
今回は在校生に加えてバンタンに入学を検討する方々が参加するオープンキャンパスのゲストに、大人気声優の小林親弘さんをお迎えし、これから声優業界を目指す方々に向けて、お話していただきました。
小林親弘さんの代表作としては、『ゴールデンカムイ』の杉元佐一役のほか、『BEASTARS』のレゴシ役、『転生したらスライムだった件』のランガ役など、多数の作品に出演されています。
トークショーの始まりとともに大きな拍手で迎えられ、颯爽とした雰囲気で登場。
最初は雑談からスタートし、司会者が夏の思い出について尋ねると、「僕の出身は愛知県で、海が遠かったので遊びに行くとなれば山や川でした」「今の季節なら避暑地に行きたいですね」
そして早速本題へ。
ー俳優からキャリアをスタートされたと思いますが、役者になったきっかけは?
大学生の頃に演劇サークルに誘われたのがきっかけで、気づいたら舞台演劇にハマりました。最初は大道具担当でしたが「人が足りないから」と言われて、演技をするようになりました。
ー声優の仕事を始めた経緯は?
劇団員として小学校などを回っているときにマネージャーから「韓国ドラマの仕事が来たぞ!」と連絡があり、それが吹き替えの仕事でした。
そのときは舞台の仕事をしていたので、自信がありましたが、舞台と客席の距離感とマイクの前で話す距離感ではまた違い、難しさとやりがいを感じました。そして、この吹き替えをきっかけに声の仕事が増えていきました。
ー代表作に『ゴールデンカムイ」への出演がありましたね。小林さんとしても転機になる役だったのではないでしょうか?
それまではたまにアニメの作品のオファーが来るかな、というくらいでした。『ゴールデンカムイ』はオーディションを受けましたが、正直受かるとは思っていませんでした。
だからこそ、オーディションでは緊張はしたものの、リラックスしながら臨めました。
今思えば、これが転機となった作品ですが「自分の持っているものを尽くそう」という気持ちはありましたね。
ー役柄を演じる上で意識していることはどんなことですか。
「自分の言葉でセリフを喋るということですね。」と語る小林さん。
キャラクターがあると、そのキャラクターに寄せなければならない、という考えもあるのですが、自分の言葉で言う、ということがその役の感情をダイレクトで伝えられることになると思います。
吹き替えを担当するときは、「この人は声が低い」とか「陽気な人だったらテンションを上げないといけないな」と思ったりするのですが、現場ではその部分が求められているわけでもなかったりします。
その役柄を演じるというより、台本の当事者になる、という考えですね。
ー学生時代にやっておいたほうが良いことは?
「色んな作品を観る」ということですかね。例えば映画を観たりするのはもちろん、好みでない作品も観ること。海外ドラマ、落語、浄瑠璃など何でも観ると良いと思います。
作品で要求されるものでは、演技が大きい、小さいといった違いもあります。大きい演技としては歌舞伎にある「見得(みえ)」というもので、例えばカードゲームをプレイするときなどに、「(大げさに)ウォーー」って投げるポーズを取るようなものです。
そして賞を獲っている作品は、なるべくひと通り観たほうがよいと思います。それが自分に合わないと思っても、なぜ合わないと思ったのか、つまらないものはつまらないと、そんなふうに自分の感覚を大切に。
そういったことをアプリなどでもよいので、軽くメモしておけば、自分のストックになります。
ー新人として現場で気をつけたほうがよいことを教えて下さい。
新人の頃は妙な負けん気がありましたが、「俺がいちばん」と思うのは危険思想です(笑)。
でも「下手に萎縮しない」ということは大事かもしれません。表現するときは大御所だろうと新人だろうと、作品を観るお客さんにとっては同じですから。ただ、収録が終わった後は謙虚な姿勢になれると良いと思います。
ーオーディションのときに意識したほうがよいことは?
もし原稿があれば、可能な限りチェックしておいたほうがよいのと、前日に原稿がくることもあるので、概要だけは掴んでおくといいと思います。
ただし無理に演じては、スタッフの方も不安に感じられ、キャスティングから弾かれてしまうことにもなるので、オーディションが始まったら大御所のような気持ちで演技をして、終わったら謙虚に。
ー普段のルーティンはどんなことをしますか。
簡単な筋トレくらいですね。スクワットをやるとか。声が出ないと思ったときは、下半身ができていないことが多いです。そのあたりの筋肉量が不足していると、声が響かない。まずは筋トレ!筋トレです。
腹筋はアウターの筋力なので、鍛えることで声が閉まってしまうから、できるだけインナーマッスルのトレーニングを、とボイトレの先生から言われました。
滑舌は悪い方ではなかったので、苦手だなと思う人は、口に割り箸を挟んでトレーニングをするとか。でも人それぞれ「楽器」が違うので、自分に合う方法を探すことも大切です。
質疑応答
ー自己 PR を考えるにあたり、「強み」を考えることが難しいのですが、小林さんはどのように強みを見つけましたか?
僕は現場で強みを見つけました。
「自分が得意だと思っていても、採用する側としては、こっちのほうがいいじゃない?」と言われることもあります。
内面からそんなに尖って強みがあるという人は珍しいと思います。現場では自分の地声から出るものをできる範囲で演じきる!という気持ちも大切かと思います。
ー役に命を吹き込むときに心がけていることは?
当事者として台本を捉えるということかな、と思います。自分が別れ話をしているというのはどんな状況なのだろう、みたいに考えることです。
そんなときでも人の声を真似することなく、自分の声でできる範囲で。愛とか色恋が関わる作品は 9 割くらいなので、どんどん友達と遊びに行ったほうがいいし、なるべく外に気持ちをもっていくほうがよいかもしれません。
ー持っておいたほうが良いスキルは?
「自分の言葉で」とはいったものの、地声ではできない領域があるじゃないですか。そんな領域でも自分なら「どう言えるか」など考えながらトレーニングに結びつける!
例えば、アイドル系の作品だったらそれも要求されると思うので。「色んなものを知っておく」というのは自分のスキルにつながってくと思います。
小林さんが「答えになっている?」と問いかけると、
「大変参考になります!!」と質問者から声があがります。
質疑応答にも大変わかりやすく、ためになる回答をしてくださいました!
ー声優の仕事の魅力は?
同じ人と演じることが多い舞台に比べて、色んな人に出会えることです。ある意味では派遣社員みたいな感じなので、日によって色々な人に会える、という楽しさはあります。
仕事仲間とは無理やり仲良くしようとはしない。一人でもいい。仲間がいなくてもいい。やっていくうちに気の合う仲間もできるので、無理してつながらないほうがいいですね。きっと感性の合う人はいるので。ありのままでいてほしいです。
ー業界で長く活躍している人の特徴を教えて下さい。
これには 2 タイプあると思います。
ひとつは「とても器用で、現場で要求されたことに応えられる人」。もうひとつは「自分は芝居をこう思います」というタイプです。
また、長く続いている人は「自分はこう思います」という考えがある人だと思います。
他に大事なことは「謙虚でいること!」
『ゴールデンカムイ』に出演してからは、頭を下げられることも増えて「偉くなったかもしれない」って思うような場面もありましたが、「でもやっぱり違うな」と思って踏みとどまりました。
ー最後に声優を目指す学生たちにメッセージをお願いします。
やっていて楽しい仕事だと思うので、その楽しさを見つけられたら長く続けていけるんじゃないかな、と思います。
その道のりではいろんな誘惑があると思います…。そういうときに「自分が役者という仕事をやりたいのか」と、無理のない範囲でもう一度、一生懸命考えてくれたらよいな、と思います。と締めくくりました。
その後、再び拍手で登場して記念撮影!
「(小林さんの後ろに立つ人に気を使って)大丈夫?見える?」
「イェーイ!!!(ポーズで写真撮影)」
そして最後には、振り返って学生たちに手を振りつつ退場されました。小林親弘さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!!