2024年3月31日(日)漫画 『文豪ストレイドッグス』の原作者であり、シナリオライターの朝霧カフカ先生が、KADOKAWAマンガアカデミーに来校、トークショーが行われました!
会場に集まったのは、朝霧カフカ先生のトークを楽しみにやってきたクリエーター志望の学生たち! ここだけでしか聞けない”ぶっちゃけ話”もまじえながら、参加者たちから事前に寄せられた質問にも応える形で、約1時間30分にわたり、トークが繰り広げられました。
朝霧カフカ先生はお面を被った姿で登場し、担当編集者の加藤浩嗣さんも一緒に入場! 受講生たちは拍手で迎えます。
デビューのきっかけとキャリアについて
朝霧先生:「デビューのきっかけはニコニコ動画に投稿し、編集者の加藤さんが声をかけてくれたことです。作品を持ち込んでデビューするという正規のルートではないので、同期という存在がいなくて寂しい思いをしているんです(笑)」
編集者としてはネット上から作家を発掘されるものなのですか?
加藤さん:「朝霧カフカ先生の動画が、脚本を作り、ドラマを見せているような感じだったので、それならば漫画の原作ができるんじゃないか、と思いました。ニコニコ動画とかX(Twitter)を見て、才能ありそうだな、という人に声をかけていくことはありますね」
そんな形でデビューした朝霧カフカ先生が「クリエーターの仕事とは?」と、苦悩した結果たどり着いた答えをズバッと一言で。
朝霧先生:「見ている人の感情を動かす商品を作る人がクリエーターです。」
さらに続けます。
朝霧先生:「作品を見る人感情を、どちらの方向に、どう動かすのかを決めなければいけない。それがもっとも 大事なことです」
漫画業界の前線で活躍する朝霧カフカ先生ですが、ここまでたどり着くには挫折や困難もあったようです。
朝霧先生:「商品として作るためには、作り手として楽しいかどうかだけではなく、読み手が楽しいかどうかを考えないといけない 。そこで一度マグマに突き落とされました。それでも学び続けて、少しずつ山に登っていくように毎日学び続けていくことが大切です 。それを繰り返していると、いずれ頂上にたどりつくことができます 」
読者の反応を見ながら、作っていくことはありますか?
朝霧先生:「『面白かった』『好き』以上のこまかい感想、たとえばこの シーンのこのめくりや、このコマが良かったというのは、漫画家になってもリアクションが返ってこないものです。それをスクールで学び、仲間の反応を得られるというのは良いと思います」
朝霧先生:「読者が何百万人いても想定読者は4人 くらいしかいないんです。出来るだけきめ細かいリアクションをリアルタイムで見る、ということが大事なんですよ。ニコニコ動画での配信は反応が来るところがよくて、ディテールに対してのイマジネーションが圧倒的に違って、多くの学びがありました 」
影響を受けた作品について教えてください
朝霧先生:「漫画の世界で活躍している凄い人たちは映画をよく見ますね。もちろん漫画の人気作品は 一通り抑えているのですが、映画は人の感情をコントロールするから参考になるんです」
敗者のゲームと勝者のゲーム
ミスをしたものが負けとなる「敗者のゲーム」を、漫画を描く視点から語っていただきました。
朝霧先生:「つまらない作品ってだいたい失敗ポイント が一緒なんですよ。漫画だと『背景を説明していない』『文章力がないので主語が誰かわからない』『キャラクターの感情がわからない』」
朝霧先生:「漫画を面白くする作業って、ある ポイントまでは減点方式なんですよ。テニスのアマチュアはミスした方が負ける、とよくいいますが、これを『敗者のゲーム』というそうです。 敗者、負けた側に原因があるということですね。あるレベルに達するまでは、ミスが勝敗を左右します。」
朝霧先生:「『こうなったらミスをしない作家になれる』ということは教えられるものなので、スクールを出ればそういった商業作家のなかに入ることができます。しかし そのさらに上、ヒット作家や映像化を目指すとなると『ミスをしない』以上の面白さや才能が必要になる。つまり『勝者のゲーム』です。」
このように繰り広げられるトークのなかで、朝霧カフカ先生はKADOKAWAマンガアカデミーのようなスクールに通うことのメリットとして、仲間たちの反応が得られることや、スキルを磨くことにより、敗者のゲームからは脱出できることを示唆していました。
敗者のゲームを脱出するにはどうするかをまず学んでいけば、とりあえずデビューまではいけますか?
加藤さん:「デビューは近くなりますね」
朝霧先生:「そうなったら僕のライバルとして戦っていくということになります。漫画を読むことは基本なので、映画を参考にするとよいですよ。漫画を参考に漫画を描くと『パクリだ』って言われてしまいます!w」
朝霧カフカ先生の日常のスケジューリング
漫画原作者・シナリオライターとして活躍する朝霧カフカ先生の日常はどんなものなのでしょうか。
朝霧先生:「1日の作業時間は3時間。1日のなかに3、4時間しか費やさないんです。受け手がどう考えているんだろう、と本気で考えると、1日に3時間以上はとても頭がもたないんです。そのくらいの集中力がいります 。」
シナリオをやる人でもネームは意識しておくこと
漫画家だけでなく、シナリオライターにとっても重要な『ネーム』について朝霧カフカ先生の考えを語っていただきました。
朝霧先生:「漫画業界で大事なのは、ネームを切れることです、ネームを切れる技術ってそのくらい大事です。ネームは描き写したり、写経したりすれば、半年くらいで描けるようになるので。1日1時間を半年くらい続けていたら、それだけで食いっぱぐれないようになりますね」
朝霧先生:「ネームの真髄である、色々な感情を操ることができる人の漫画は常に面白いです。シナリオ って、自分自身も含めて面白いものが書けるときとそうでないときが あるんですよ。でもネームのうまい人 は絶対に滑らないんです」
編集者から業界を目指す人へのアドバイス
業界を目指す方々へ向けて、朝霧カフカ先生や編集担当の加藤さんによるアドバイスもざっくばらんに語られました。
加藤さん:「友達よりも商業的目線で読んでくれるのが漫画編集です。編集部に持ち込むと、生の意見が聞けます。時々意地悪な人もいるかも知れませんけど。作品がボロボロに言われても皆さんの人格が否定されているわけではないので気にしないでください。編集者と話すといろんな企画が生まれてくる、ということもあるので、人とのコミュニケーションを取るということを怖がらずに」
漫画の8割はキャラクター
それぞれのキャラクターはどのように作られていますか、という質問が多いのですが、
『文豪ストレイドッグス』はあくまでも擬人化なので、そのニュアンスなどは朝霧カフカ先生独自なのでしょうか?
朝霧先生:「『文豪ストレイドッグス』については、もしあの有名な文豪が出るとしたら、どういう位置づけで、どんな性格で 出てくるのか、ということを考えるのがひとつです。
すごく強くて、爆発物を扱って、など。先に文豪が決まっている場合もあれば、先に悪役が決まっている場合もあります」
朝霧先生:「キャラクターが立っていなくて、話が面白いということはないです。感情を動かすために何が必要かというと、8割はキャラクターです」
メディアミックスについても語ってくださいました。
朝霧先生:「アニメの脚本会議では、こんな感じのセリフを考えてください、といわれて、よく入れます」
朝霧先生:「例えばキャラクターがダイブする前にかっこいい一言を言いますのでそれを考えてください、っていわれて、『わかりました』って言って書いたこともありましたね 」
朝霧先生:「舞台では僕がイチから脚本を全部書いたものもありましたね 。」
朝霧先生:「私は見ている人の感情が大事なので、見ている人の感情が最大化されるなら、自分で書いても誰かに書いていただいても、どちらでもよいと思っています 」
朝霧先生:「感情という神様を崇拝していれば、そんなにトラブルは起きないのです」
朝霧先生は冒頭から「クリエーターの仕事は読者の感情を動かすこと」だと、様々な例を挙げつつ、繰り返しお話しされていました。
まとめとして
エンタメの分野を目指す参加者に背中を押す一言をお願いします
朝霧先生:「大変やりがいがあり、楽しい仕事です。この椅子に座るのは楽しいことなので、まず前半戦はミスをしない、敗者のゲームを生き残るが 大事です」「勝者のゲームになったときは、ゲームのルールが異なりですが、みなさんの才能やオリジナリティーがそこではじめて価値を持ち、人生を輝かせてくれることでしょう。 」
朝霧先生:「業界の人と食事をすることもありますので、皆さんとはその時にお会いできれば良いですし、一緒に仕事ができるときをお待ちしております」
朝霧カフカ先生、そして加藤浩嗣さん、どうもありがとうございました!